東洋医学と西洋医学について
「東洋医学と西洋医学の違いはなんですか?」
こうした質問がよくお客様から寄せられます。ここでは、皆さまに広く東洋医学について知っていただけるよう、東洋医学について西洋医学との違いも交えて詳しく解説します。
東洋医学と西洋医学の違い
東洋医学には『未病を治す』という言葉があります。これは、「病気になっていない状態の人を症状が出る前に改善する」という意味です。東洋医学では、お客様が本来持っている自然治癒力を上げることで症状や体質を改善し、症状が出づらい身体をつくることを目指します。
一方、西洋医学ではお客様の症状をそれぞれの部位、パーツごとに分けてみていきます。このやり方は、症状のあるところを細かくみることはできますが、身体全体を通してみるのは不得意です。
また東洋医学では、『身体の機能を高めて症状の出ない身体をつくる』ことを目的としています。対して西洋医学では、症状を『止めて抑える』ことが得意です。
例えば腰痛ひとつをとっても、西洋医学では腰周辺を中心にみていきますが、東洋医学では腰痛の出るタイミングや発症時間、腰痛のある部位、元々お持ちの症状、食べ物の好き嫌いなどをみるのが特徴です。細かくみていくことで、お客様一人ひとりの体質に合わせた施術を行っていきます。
わかりやすく説明すると、症状がある状態を火事現場の煙で例えるなら、火事により生じた煙(症状)を一生懸命吸い取るのが西洋医学です。そのため、一時的に症状が緩和したとしても、また戻ってしまう(再発)ということが多くなります。東洋医学の場合は、火事の原因である火の元を消火(施術)するので、結果として煙(症状)もなくなり病が改善できるのです。
東洋医学の陰陽論とは
陰陽とは森羅万象、つまり宇宙のありとあらゆる物事を陰と陽2つに分類して考える古代中国の思想のことを指します。古代自然哲学では始めに太極というものがあり、それが陰陽に分かれて陽の気が上昇し、天となり陰の気が下降して地ができました。そして、この2つの気の働きによってすべての事柄を理解・説明し、将来まで予想しようと古代中国の方々は考えたのです。
例えば火と水、太陽と月、光と闇、上と下、男性と女性、夏と冬のように、すべて相反する2つの性質からなると考えます。これらは切っても切れない関係で、一方がなければもうひとつも存在することができません。この世のありとあらゆるものは、これら陰陽の気が調和することにより、自然の秩序が保たれています。
この陰陽には、次の5つの特徴があります。
①陰陽互根
陰があれば陽があるように、互いが存在することで己の存在が成り立ちます。
②陰陽制約
陰陽が互いにバランスをとる作用のことです。互いが過剰にならないよう、抑制する働きをすることをいいます。
③陰陽消長
陰陽の量的な変化のことです。陰陽はシーソーのようにバランスを取り合っています。一方が強くなれば反対側は弱くなるという考え方です。
④陰陽転化
陰陽の質的な変化のことです。陰陽どちらかのエネルギーが最高点に達したときに、反対側の性質に転化すると考えられています。季節でいうと夏至や冬至がこれにあたります。
⑤陰陽可分
陰の中にも陽はあり、陽の中にも陰はあります。陰陽それぞれにさまざまな段階の陰陽があると考え、物事はこれにより無限に陰陽に分割できるという考え方です。
経絡治療ではこの陰陽のバランスが取れている状態を健康とし、バランスが崩れた状態を病気と考えます。不調を訴えるお客様が、どのような理由で陰陽のバランスを崩しているのかを、東洋医学の伝統的なカウンセリング法である四診法(ししんほう)を駆使して分析し、陰陽調和をすることで症状を改善させます。
東洋医学の五行説とは
五行とは、万物は木・火・土・金・水の5つの元素からなるという古代中国の自然哲学の思想で、陰陽と並べて陰陽五行説ともいわれています。5つの元素は一定の法則で互いに影響を与えながら変化し、循環しているというのが五行説の根幹です。
現代でも料理(苦いコーヒーに甘いものを入れる、しょっぱいお肉に辛いワサビやマスタードをつける)やスポーツ(大相撲)、季節(四季+土用)など、日本人の風習や生活、風水の知恵といった、意外と身近なところでも使われています。また暦の一週間も、五行(木、火、土、金、水)に陰陽(日、月)を合わせると一週間の曜日になるなど、陰陽と五行には密接な関係があります。こうした自然界にも五行があるように、人間の臓腑や精神にも五行があるのです。
では、五行を人間に当てはめて考えてみましょう。
木
木は春の象徴で、樹木の成長する様子を表します。臓腑でいうと『肝・胆』が担当です。肝は身体の気血の循環をスムーズにする役割を持ち、胆は肝の役割をサポートします。肝の状態が良いと決断力や行動力に溢れるためリーダーシップなどを発揮できますが、状態が悪くなるとストレスを受けやすくなり、イライラしたり不眠や情緒不安定になったりすることが多くなります。
火
火は夏の象徴で、光り輝く炎が元となり、炎のような灼熱の性質を持ちます。臓腑では『心・小腸』が担当です。心は身体の血を循環させ、栄養を運ぶ役割を持ちます。また人間の意識や思考をコントロールするのも心の役割です。
小腸は、胃から運ばれてきたものを栄養分と排せつ物に分ける役割を持っています。心の状態が良いと想像力や表現力が豊かになり、自分にも他人にも深い愛情を与えることができます。しかし状態が悪くなると、感情の起伏が激しくなったり、意識や記憶などに不調が起こったりすることがあります。
土
土は季節の変わり目である土用の象徴です。植物の芽が土の中から発芽する様子を表していて、万物を育成、保護する役割を持ちます。臓腑では『脾・胃』が担当です。
脾は消化吸収と栄養物の運搬をし、食べ物から吸収した栄養をエネルギーに変えて蓄える働きがあります。
一方、胃は食べ物を消化吸収し小腸へ送り出します。脾の状態が良いと食べ物や知識の吸収がスムーズで思慮深い状態になりますですが、働きが悪くなると集中力が低下し、考えすぎにより心身ともにいっぱいいっぱいになる傾向が強いです。
金
金は秋の象徴で、地中の鉱物が元になっていて、金属のように堅固で確実な性質を表します。臓腑では『肺・大腸』が担当です。肺は外からの良い気を取り入れて、体内の不要な気を排出します。また、皮膚や鼻、のどの呼吸器にバリアを張る役割もあります。
これに対し、余分な栄養を運搬して水分を吸収する働きがあるのが大腸です。
肺の状態が良いと気をスムーズに巡らせて外からの邪気もしっかりと防いでくれますが、状態が悪くなるとふさぎ込みがちになり、気持ちが憂鬱になる傾向にあります。
水
水は冬の象徴で、泉から湧き出る水が元になり、命の水と考えられています。臓腑では『腎・膀胱』が担当です。腎は体内の水のバランスをコントロールしていて、骨や生殖器とも関わりが深く、人体の本質的なエネルギーに大きく関係しています。
対して膀胱は、尿の排出に関わりが深いです。腎の状態が良いとエネルギーに満ちあふれていますが、状態が悪くなると老化現象の加速につながります。
また、五行には相生(そうしょう)、相剋(そうこく)、比和(ひわ)、相侮(そうぶ)、相乗(そうじょう)といった作用もあります。特に東洋医学の世界では、相生や相剋がよく使われています。
相生とは水が木を成長させ、木が燃えて火が生まれるというように、順番に相手を強めて生み出す関係のことです別名「親子関係」ともいわれています。対して相剋とは、水が火を消す、火が金を溶かすというように、相手を抑える関係のことです。別名「シーソー関係」ともいわれています。東洋医学では、これらの陰陽五行をお客様の状態の確認や施術法に取り入れています。
おわりに
東洋医学と西洋医学はそれぞれ得意とするものや、病気に対する捉え方が異なります。しかし、これらはどちらに優劣がつくというものではありません。東洋医学は陰陽五行の考えの元、身体全体から症状をみるのが強みです。
ご自身の状態や症状に合わせた最善の選択をするためにも、これらの違いや特徴を覚えておくと役立つでしょう。最後までお読みいただき、ありがとうございました。