鍼灸院の通い方について
当店に初めて来店されたお客様に
- 「何回でよくなりますか?」
- 「どのくらいの頻度で通えばいいですか?」
とよく質問いただくことがあります。
また、身体や美容の不調を改善するために、これから通おうかと考えている方も多いと思います。そこで今回は鍼灸院に通う場合、どの程度の期間を通えば効果を実感できるか、また、しっかりと効果を実感するためにはどのようなことを意識すべきかについてお話しします。
鍼灸院に通う期間と頻度の目安
鍼灸施術を受けてみようと思うときに、1回で良くなるものなのか、それとも通い続けなければいけないものなのか気になりますよね。実際に通う期間については、鍼灸施術を受ける内容や目的によっても異なります。
鍼灸施術で改善が見込める症状
鍼灸施術というと肩こりや腰痛のイメージがありますが、実は鍼灸施術で改善の見込める症状は他にも多くあります。
例えば、
- 眼精疲労
- 不眠
- 頭痛やめまい
- 便秘や下痢
- 食欲不振
- 婦人科系疾患
- 不妊
- その他の慢性病
といった感じです。これら以外にもかなり数多くの例があり、症状に応じて施術内容や期間が決まります。また、身体のメンテナンス以外にも、美容や小顔といったお悩みの解決にも鍼灸は有効です。
施術の頻度と期間
基本的に何か身体に不調を感じている方や、不調改善のために施術を受けたい場合は、最初の時期は週1回程度の頻度で通う必要があります(急性のぎっくり腰や寝違えなどの場合は週2回通っていただき、2~3回の来店で済むことも多いです)。その後、症状が落ち着いてきた場合や、元々身体のメンテナンスが目的な方は隔週や月に1回程度のペースにするなど施術者と相談の上、お身体の状態をみながら決めていくのが一般的です。
身体に不調がある方の場合、軽度のものであれば、おおよその方が3~4回の施術で効果を実感していただいております。慢性的な不調を感じている方でも、約3ヶ月程度の施術によって効果を実感している方が多い印象です。ただ実際には、症状やお身体の状態によって通い方が異なることもあります。鍼灸院に通うときは、最初のカウンセリングで施術者にご自身の要望やそれにあった施術方法、通い方、要する期間などをご相談ください。
また、施術をしていくなかで、改善状況によって当初の通い方やかかる期間が変わってきくることもあります。このようなケースもありますが、大体は1回目に身体に良い変化が見られ、2回目には身体が楽な状態が続くようになり、3回目では1週間くらい楽な状態が続くようになるというように、症状が徐々に良い方向へ向かっていきます。この良い方向に向かうためには、正しいリズムで来店していただくことが必要です。次で、正しい鍼灸院の通い方と悪い例を見ていきましょう。
悪い通い方の例
悪い例は、腰痛や肩こりの状態をイメージしていただくとわかりやすいです。不調や痛みが生じたら来店し、施術を受けて良くなったら自己判断で通わなくなって、身体のケアもほったらかしにするという方は少なくありません。その結果、再び症状が悪化して来店して施術を受けて良くなるという悪循環な状態を何度もくり返すことになります。これでは一向に、症状や不調は改善されません。
鍼灸院の正しい通い方
対して正しい鍼灸院の通い方は、以下の通りです。まず、来店してから数日経つとだんだん身体の状態が悪くなりそうな感じが出てくるので、そのタイミングで再び施術を受けます。そうすると身体は前回よりも良い状態まで改善されるので、次は1週間位良い状態が続くようになり、毎週のように定期的に何回か受けていただくと、気になっていた症状が徐々に減っていくという流れです。
この「何回か」というのは個人差があるため正確には申し上げづらいですが、先ほどお伝えした通り3~4回は必要だと思います。なぜなら、慢性化した症状は自律神経や内臓にまで影響を及んでいて、脳レベルで身体が悪い状態を維持しているからです。
人間の身体は良くも悪くも一定の状態を保とうとする働き(ホメオスタシス)があります。これは、温度や湿度など外界の条件が常に変化する中で、生命維持をするために備わった原始的な仕組みです。よって、長い年月をかけて悪い状態になってしまった身体は、本能レベルでその状態を維持しようとしてしまいます。
鍼灸は身体に適切な刺激を与えて良い状態に戻します。しかし、脳からの指令で身体は再び悪い状態に戻ろうとするのです。そのため、来店を重ねるたびに身体に何回も刺激を与えます。このようなことをくり返すうちに、脳は「鍼灸で良くなった身体の状態が正常」と認識してくれます。この瞬間が、「症状が改善された」といえる状態かもしれません。
いざ通ってみてもよくならないときは?
鍼灸院に通い始めて月日が経っていくと、こんな疑問を感じる方もいると思います。
「何ヶ月も来店しているのに良くなった感じがしない……」
こうした疑問を感じる理由は、自分の頭の中の身体のイメージと現実の身体の状態にギャップがあるからです。このギャップを埋めるには、施術者と一緒になって現在地点を把握する必要があります。
また、身体が良くなるというのは、以下の3パターンです。ただし、すべての方が同じように症状が改善されるわけではなく、当然、年齢や体格などの個人差や症状の軽重によっても身体が良くなるリズムは異なります。
回数を重ねるごとに症状が改善されるケース
若い世代の方や運動習慣がある方、症状が軽い場合などがこれに該当します。この場合は「なかなか良くならない……」という疑問はわかないと思いますが、唯一あるとすれば、「激しく運動しても足がまったく痛くなくなるまで」や「以前のように何も気にせずに食事できるようになるまで」というように、期待するゴールが高すぎる場合があります。
人間の身体は、天気や感情の起伏など日によって善し悪しはさまざまです。さらに年齢を重ねれば重ねるほど、どんな日でも絶好調でいることは難しくなるでしょう。それを施術で追及するのは難しいため、施術者と一緒にゴール地点を見直す必要があると思います。
ダイエットのように症状が改善されるケース
最初のうちはなかなか良くならないけどある日突然グッと良くなる、もしくはそのうちグッと良くなるという、ダイエットによく見られるパターンがこちらです。この場合は「最初は良かったけど、最近全然良くならない」と思うことがあるかもしれません。
これもダイエットと同じで、停滞するときと良くなるときをくり返すため、この停滞するときに来店をやめてしまうことが多いです。スタート地点から良くなっていることは事実ですので、もう少しで訪れる良い状態のためにも継続した施術を頑張りましょう。
症状が重い方や高齢者のケース
「もう何ヶ月も通っているのに良くなった感じがしない」と思う方が一番多いケースです。何年も症状に苦しんでいる方や高齢者の方は、先述したように脳レベルで症状が身体に固定されてしまっています(ホメオスタシス)。おそらくこのパターンの方は、色々な病院や治療院(鍼灸・整骨院・整体)に通ったけれど症状が改善されない、という方が多いのかもしれません。
しかし重要なことは、くり返し何度も習慣化して施術を受けていただくことで固定化した症状を変化させていくことです。ご本人の実感では症状が変わっていなくても、くり返し施術を受けていただくうちに身体には良い変化が現れています。「症状は変わらないけど、冷え性がなくなっている」「肩の筋肉が緩んできている」などが良い例です。
症状が改善されたらもう通わなくていいの?
お辛かった症状が改善されると、日常生活が楽に過ごせると思います。これは施術者にとってもお客様にとってもうれしい状況ですが、「もう良くなったから、通わなくていいよね?」と疑問に思う方も多いでしょう。この疑問は「はい」とも「いいえ」とも答えられます。つまりここからは、お客様ご本人の価値観の問題です。
症状にお悩みのときは鍼灸院の使命としてゴール地点まで導き、日常生活の質を高めることを目指します。しかし、ゴール地点に到達してからは「予防としての鍼灸」です。予防は必ずしも鍼灸で行なう必要はありません。ご本人の価値観で決めていただくべきだと思います。とはいえ、症状が改善されたからと身体のケアをしないでほったらかしにすると、症状が再発する可能性が高まるので要注意です。
症状を再発させないためにできること
症状を再発させないために何をすべきかというお話をする前に、「なぜその症状になってしまったか」ということを考えてみましょう。食生活や生活習慣の積み重ねで発症した慢性症状は、日々くり返される日常生活の悪いクセや小さなストレスなどが積み重なることにより起こります。こうなると内臓の機能も落ち、身体の循環が悪くなっていきます。ある日気づいたときには、症状があふれ出て苦しい状態になっているということも多いです。
空のコップを身体に見立て、汚れた水という名のストレスや悪い生活習慣が気づかないうちにどんどん溜まっていくことをイメージするとわかりやすいでしょう。汚れた水がある日満タンになってあふれたときに、苦しい状態になっていることに気づき、「何とかしなければ」と思うようになります。鍼灸院に来店したときに満タンだった汚れた水は、毎回の施術で徐々に減らしていきます。施術をくり返して症状が改善されたときは、コップは空に近い状態になっているでしょう。
しかし何もしない場合、再び汚れた水がコップに溜まってしまいます。つまり、良い状態を保つためには、汚れた水を溜めない努力が必要です。汚れた水を溜めないためには次の2つの手段があります。
①汚れた水自体を身体に溜めないこと
まずひとつは、いわゆる日常生活の改善です。そもそも重要なのは、お悩みの症状になる原因を取り除くところにあります。もしかしたら、鍼灸に通っている間は食生活などd生活習慣の改善を積極的に行っているかもしれません。しかし、一般的に病気の原因は仕事や人間関係などのストレスが多く、自分の力だけで改善していくのは難しいものです。つまり、日常生活の改善だけでは限界があると思います。
②鍼灸でメンテナンスする
前述で日常生活の改善だけではメンテナンスしきれないことはお伝えしましたが、鍼灸の使命としてもうひとつ、「養生」という考え方があります。これは、毎日の生活で少しずつ疲労する身体を鍼灸によってメンテナンスしていくことです。疲れたときにマッサージや整体に行く方は多いと思いますが、鍼灸によるメンテナンスはこれらとは異なります。
一般的なマッサージや整体は「今日はどこが痛いですか」という質問に「肩や腰」と言われればそこを中心的に揉んだり押したりします。しかし鍼灸の場合は、その方の生活習慣や職業などを考慮して、肩や腰が疲労している原因を追究するのが特徴です。さらに身体のバランスや内臓機能を高めることで、その人が本来持つ自己治癒力を高めます。
また、もともと症状の改善で来店されていた方であれば、施術者はその方の身体をよく知っているため、メンテナンスや改善する方法も知っています。再発を防ぎ、日常生活をより良く過ごすためには、定期的に鍼灸院に通うことも必要でしょう。
おわりに
今回は鍼灸院の通い方や通院頻度、注意していただくポイントなどをお話しさせていただきました。最後までお読みいただき、ありがとうございました。